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「安全への願いを伝えて」
 日航ジャンボ機が御巣鷹山に墜落し、520人が亡くなって、今年は25年目になります。遺族や、安全を求める多くの人々は、25年の間、御巣鷹の尾根をめざし、「安全の鐘」を鳴らしてきました。御巣鷹山は安全を願う聖地として、これからも多くの市民が、安全への願いを伝え続け、事故を抑止していくと信じます。
 8・12連絡会の「空の安全を求める活動」は、遺族の枠を超えて、乗客の側から、つまり消費者側から安全への警鐘を鳴らし、安全文化を高める活動として、次世代へつなげていきたいと思います。

「米国における事故被害者支援の法制度」
 米国のNTSBは、連邦運輸省からの独立機関として1967年に創設され、あらゆる運輸事故の事故調査を実施しています。1996年、「航空災害家族支援法」が設立、NTSBのミッションに航空機事故遺族の家族支援が加えられ、さらに、2008年、「鉄道旅客災害家族支援法」も成立し、鉄道事故も家族支援の対象になっています。
 この「航空災害支援法」は、事故にあった乗客家族への支援者の指定や、その権限を明確にし、実際の対応プランや作業部会の設置が定められています。
 また、NTSBが行った事故調査の途中経過や原因等について、家族に最優先に説明すること、赤十字などによる機関を指定し、精神的ケアを行うことになっています。加害者企業がする被害者への支援内容を明記し、その監督をすること、メディア、弁護士からのプライバシー保護のための勧告、遺体や遺品、補償問題について相談できることの保証、乗客名簿の提供範囲などを具体的に明示し、さらに、事故、及び事故後の後遺症に悩む家族の支援機関の紹介など多岐にわたる支援内容が明記されています。こうした法律の下で、事故の被害者、家族にきめ細かな支援が行われています。ここには、私たちの事故が起きたとき必要と感じたさまざまな支援が、法律として定められているといえます。今後、何時起きるかもしれない大地震や災害、事故に備えていくためにも、日本でもこうした法律を制定し、必要な支援が行われる体制を確立してほしいと思います。

「国土交通省の事故被害者の支援のための検討会に望むこと」
 日本では、平成20年4月、国土交通省設置法等の一部を改正する法律案に対する付帯決議により、公共交通に関わる事故被害者支援の充実を図ることとなり、国レベルの初の検討会が翌年9月に設置されました。ここでは、初めて被害者から、事故後に必要と感じた支援内容などについての聞き取りや、アンケート調査が実施されました。今後検討会では、2年間をかけて、その教訓をもとに支援策の指針を作成することとしています。
 わたし達は、事故直後の混乱の時、情報提供が迅速にかつ一元化されることや、生活支援・経済支援の情報が、適切なときに平等に提供されること、救難・救助体系の連携や遺体確認システムの強化、事故原因に対する説明が優先的に提供されること、長期にわたり必要な心のケア、補償問題への援助などが、個別のニーズに応じて、行われていくことなどを望みました。

 家族を失った悲しみと、後悔の念は、なくなることはありません。遺族は、事故から何年たっても命日が近づくと、精神的な苦しさが身体にもひびいて、体調を崩す人がいます。社会に戻っていく速度はひとり一人違いますが、心が癒されていくためには、心おきなく、亡き人のことを語れる場が身近に必要です。

 それには、互いの心のプロセスを共有していくための仲間である「8・12連絡会」のような自助グループの役割が大きいと考えます。遺族には継続的な支援が必要とされます。悲しみのプロセスに寄り添える場所が身近にあり、専門家と市民の理解が得られ、遺族自身も支援者になれるシステムも必要です。

「刑事捜査より事故調査を」
 また、わたし達は、事故から25年間活動を続け、航空機の安全性向上のためにはどうしたらいいのかと議論してきました。事故当初より、基本的に「原因が複合化する事故の場合、重大な過失や故意の場合を除いて、過度な刑事罰は、原因究明には結びつかず、安全向上にならない。刑事捜査より事故調査を優先して、必要に応じた免責をし、真実を明らかにさせるほうが、将来の事故を未然に防ぎ、安全をさらに向上させる」という考え方は一貫しています。「事故の責任を明らかにする事故調査」より「事故の原因を全ての段階で明らかにしていく事故調査」を優先させていくことが本当の再発防止につながると考えるからです。

 遺族の「何故、亡くなったのか」「何故、事故は防げなかったのか」の問いに答え、遺族・被害者の方々の「明日の安全につなげたい」という思いを第一に、一個人の責任だけでなく、組織全体の安全への姿勢が議論なされ、過失責任について考え、複合化された事故の真の原因をあきらかにする方法が、新たに見出していけたらと考えます。原因や責任が分散しているハイテク関連や、大企業の関与する事故は、鎖のようにつながった原因を断ち切ることができずに事故に至ります。このような現代の事故に対しては、新しい原因究明と再発防止のシステムが必要になりますが、未だ、法はその流れに追いついていません。

 遺族の求める責任追及は、事故を未然に防ぐ手立てを探り、再発を防止し、企業の安全軽視の姿勢を温存させないことで、事故を抑止していくことにあります。責任追及は、被害者感情を癒す、社会を沈静化させるなどの目的で行われてはなりません。事故調査と捜査については、今こそ、「捜査」と「調査」それぞれの役割を根本から見直してほしいと思います。
 
 エラーが誰の責任かよりも、どの方法で抑止できるかを探りたい。ミスを処罰することでは、ミスは、減らない。事故に至る小さな芽を摘んでいくことが必要です。失敗を隠さず共有してほしい。罪を問うのは故意や重大過失に限って欲しい。刑事責任を問うことよりも、事故調査を優先して欲しい。そして、事故調査の透明性を高めて欲しい。これが、私たち遺族会が、25年にわたって求めてきたものです。

「あらゆる事故についての公正な事故調査機関が必要」
 事故を未然に防ぎ、安全性を向上させていくという「安全の文化」を、皆で創っていかなければなりません。事故の再発防止のためには、安全対策をチェックする市民の連携が必要です。それが、事故を抑止することになります。さらに、新しい時代の流れの中では、日々の生活の中の事故を含めた第三者による公正な事故調査機関が必要だと考えます。

「日本航空の真の再生を願って」
 8・12連絡会は、残骸や遺品について、事故1年目から、日航に保存展示を要望してきました。「事故を忘れさせない」「命を生かしたい」というゆるぎない信念がそこにあります。日航の安全啓発センターに、残骸や遺書と遺品、そして、8・12連絡会の会報「おすたか」も展示されました。その一瞬まで生きていた方々とその後の残された家族の思いが、「マニュアルにはない安全」を訴え、事故の教訓を残し、事故を抑止していく役目を持っています。

 現在、企業再生の途上にある日本航空が、「事故を生かし、遺族と安全を共に重ね、新たな航空会社として生まれ変わっていくこと」を願っています。この「安全への流れ」を止めることなく、一日も早く再生することを望んでいます。

「25年にわたる皆さんのご支援に感謝します」
 毎年8月11日に上野村で、灯籠流し「安全のあかり」を行うことにより、多くの市民の皆様と共に慰霊をし、事故を語り継いできました。25年間、こうした行事を通じて、多くの皆様に支えていただきましたことに改めてお礼を申し上げます。今後も、皆様と共に日々の生活の中の安全も含めた「安心安全な生活を求めて」活動を続けてまいりたいと思います。

2010年8月
8・12連絡会事務局


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