8・12連絡会はこの事故の遺族が互いに支えあうことを目的に作られた会です。私たち遺族は�事故を風化させないこと�それが再発防止につながると信じてきました。事故が起きたのは、1985年のことです。
この年の出来事と言えば、阪神タイガース優勝、科学技術の進歩を信じたつくば博、NTTの誕生など、いずれもその時代背景を象徴しています。また、右肩上がりの発展を続ける戦後日本が中曽根政権下でプラザ合意をし、その後バブル時代に突入していきます。より速く、より快適に、より豊かにを目指していましたが、まだケータイもインターネットも使われていない時代でした。

 17年前の阪神大震災、7年前のJR西日本脱線事故、そして、昨年の東日本大震災と一度に多くの人命が失われる大きな事故や災害も起きています。
 今年、4月には、群馬県藤岡市の関越自動車道でツアーバス事故が起きました。
 命を運ぶ乗り物に最も重要なものは安全にかけるコスト。この悲惨な事故で改めて思います。安全にかけるコストを削ってはいけない。公共輸送機関にとって安全は大前提です。
 震災から1年5ヵ月経ち、物や街の復興は少しずつですが、目に見えます。でも、人の心の復興は目に見えません。災害でも事故でも、突然大切な人を亡くした時は、想像を超える苦しみが襲います。核家族化、高齢化の中で、孤独死がいわれ、無縁社会も広がっています。そんな社会の中で、「事故で突然、家族を亡くし、一人では解決できないこと」が起きた時、人と人が、顔と顔を合わせ、時間をかけて、被害者支援をしていくことが大切です。 

1、被害者(被災者)支援の充実を
 情報の提供と心のケアなどの遺族支援は、事故だけでなくあらゆる災害にも共通します。東日本大震災の被災者への総合的な国の調査は、進んでいません。被害(災)者が,適切なタイミングで情報を迅速かつ平等に得られ,経済的,精神的支援を受けられる社会を構築していくためにも、今、苦しんでおられる方一人一人の声を聴き、支援プログラムを作ることが求められます。
ill 私たちは、事故の被害者が、身近なところで相談ができ、そのプロセスに寄り添う被害者支援を、国が一元的に担う窓口が必要だと考えてきました。事故被害者支援については、アメリカには、航空災害家族支援法があります。事故にあった被害者家族への多岐にわたる支援内容が、そこには網羅されています。日本にもこうした法律が必要ではないかと要望してきました。
この被害者の支援について、日本でも3年前(2009年9月)に、国土交通省の中に「公共交通における事故による被害者等への支援のあり方検討会」が作られ、検討が始まりました。「8・12連絡会」と「T A S K」は、この検討会に委員を送り、被害者の立場から発言をしました。2010年8月には、当時の前原国交省大臣と8・12連絡会の遺族が、日航安全啓発センターで面会しました。その際、前原大臣は国として、この被害者支援の法制化を検討すると約束しました。
 その後、国土交通省は、「公共交通における事故による被害者等への支援のあり方検討会」や「JR福知山線脱線事故の検証委員会」などの提言を受け、昨年、運輸安全委員会に事故調査情報提供窓口を設置し、さらに、今年4月から、「公共交通における事故による被害者等への支援のあり方検討会」の提言で、国が、直接的に事故被害者や遺族らを支援するための、常設の組織「公共交通事故被害者等支援室」を設置しました。

2、被害者の人権
 この新たに設けられた支援室は、「職員は、事故直後現場に駆けつけ、消防や警察、病院などからの情報を整理して、被害者家族らに伝える窓口機能を担う。
 また、事故当事者の企業や関係機関に対して、遺族らの間に立ち、コーディネーター的役割も果たし、そして、心のケアも含めて、中長期的に支援をする。」とあります。
 多くの事故被害者団体が長年求めてきたことがやっと取り上げられ、被害者の視点に立った被害者支援が始まります。長い時間がかかりましたが、被害者の人権を守っていくための大きな一歩だと考えます。

 今年、4月に起きた、群馬県藤岡市の関越自動車道のツアーバス事故でも、被害者の方から国の支援室の窓口にすぐに問い合わせが来ました。突然の惨事で大切な方を亡くされたり、怪我をされた方々は、どうしていいかわからない場合がほとんどです。地元警察などの関係機関と連携をし、被害者に寄り添い、必要な情報を迅速に提供し、他の機関にもつなげる役目を果たして欲しいと思います。また、被害者が、互いに情報を共有していくことは、「生きる力」になります。このきっかけを作ることが、この支援室の重要な役目と思います。被害者支援が最大限機能するように願います。

3、なぜ助からなかったのか?
 なぜ事故が起きたのか?なぜ助からなかったのか?
 この「なぜ」を解消し,1日でも早くその答えを遺族に届けること.これも被害者支援です。被害者は「事故から教訓が生まれること」を何よりも望んでいます。
事故調査の目的は再発防止です。捜査や刑事罰に阻害されることのない専門性の高い、独立した透明性のある事故調査が、国民を納得させ、将来の安全に繋がります。また、事故の調査資料は国民の共有財産です。

4、「かけがえのない命」を子供たちに伝えよう 
ill 私たちは、原発事故後、「安全神話は、神話でしかない」「ありえないといわれていたことも起こる」「どんなシステムにも、リスクはある」と知らされました。利便性の裏にある危険を知り、私たち市民一人一人が、「この原発事故は、どうすれば防げたのか」についての正確な情報を得、整理し、共有していくことが必要です。
原発も飛行機も、命を運ぶすべての乗り物は「かけがえのない命を守ること」が大前提です。
 安全問題を考えることは、日本をどんな形にしていくかに繋がります。人々の暮らしをどんな風に変えていくかに繋がります。「幸せってなんだろう、豊かさってなんだろう」と問いかけ、この国の形を決めていくのも、私たち一人ひとりです。又、ボタン一つで人の命が消えたり、よみがえったりするゲームの世界に慣れている子どもたちに、クリックしても戻らない、「かけがえのない命」を伝えていきます。

2012年8月12日
8・12連絡会事務局


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