8・12連絡会からのメッセージ

2011年6月12日

 

8・12連絡会では、国交省の「公共交通における事故による被害者等への支援のあり方検討会」と消費者庁の「事故調査機関の在り方に関する検討会」の委員を委嘱され、この1年8か月、合計30回近い会議等に事務局長・美谷島邦子が出席しました。この両検討会の「まとめ」については、国交省消費者庁のホームページに6月初めそれぞれ公開されています。ご覧ください。

検討 会では、事故被害者の生の声を一つでも多く伝えるため、毎回積極的に発言をしました。今回、国は遺族会を通じて、過去の事故被害者への支援ニーズ調査を初めてしました。そのアンケート調査やヒアリングの回答と私たちが26年の間、何度もしてきたアンケートの結果とを繰り返しめくり、他の事故の遺族たちとも連絡しあいました。また、会議のための資料作りでは、気がつくと夜が明けてしまう事もしばしばありました。貴重な経験でした。こうした機会をいただいたことに感謝いたします。

まずは、2つの検討委員会のまとめの内容についてご報告いたします。


[1]
「公共交通における事故による被害者等への支援のあり方検討会」(国土交通省)では、鉄道や航空機などの大規模な事故が発生した場合の、被害者家族の心のケアを含めた総合的な支援策を検討するため、2009年度から検討会が開催されました。国として、被害者への支援ニーズ調査を行い、御巣鷹山事故被害者はじめ事故被害者の声が集約されました。この貴重な調査結果を基に、2010年度以降においては、前年度の検討会で明らかになった支援ニーズ等を踏まえ、引き続き、遺族団体や支援団体の参画を得ながら、具体的な支援内容等について、有識者、行政関係者等も交え、検討をしました。
そして、本年5月24日に開催された最終検討会で、支援の窓口となる「公共交通事故被害者等支援室」(仮称)を来年度中に同省に設置することなどを盛り込んだ提言をまとめました。この提言にある「支援室」は、事故を起こした事業者と事故調査機関、自治体などとの間で調整役を務め、情報提供の窓口となるほか、事業者に対して事故現場に向かう被害者家族の宿泊所の手配など、具体的な対応計画を策定するよう促し、事故後に被害者が必要とする心のケアなどのため医療機関やNPO団体などの支援機関との連携を図るほか、対応に当たる職員が適切に被害者をサポートできるよう教育、訓練の充実やマニュアル策定などをすることとしています。
災害対策基本法の防災基本計画や防災業務計画等を見直し、事故被害者や家族等への支援体制を整備し、被害者等支援室を詳細な工程表により整備する、という内容のこの取りまとめは、被害者支援において、画期的なことと考えます。同時に、事故調査機関への信頼性の確保に繋がると考えます。

[2]
「事故調査機関の在り方に関する検討会」(消費者庁)では、 事故調査は、国土交通省の運輸安全委員会や経済産業省所管の製品評価技術基盤機構など、複数の機関で行われていますが、06年のエレベーター事故などを契機に、消費生活関連の事故原因を究明する、所管官庁から独立した調査機関の必要性が指摘され、消費者庁が、本検討会をつくり14回にわたって議論しました。このまとめには、被害者と向き合う事故調査として、被害者への積極的な情報提供や説明の必要性、また、被害者の再調査の申し出については、必要な調査につなげる仕組みが必要としています。そして、事故の記憶の保存に努めることとし、8・12連絡会の遺族たちが、要望してきた「日航安全啓発センター」の取組みが参考として盛り込まれました。
検討会のまとめの結論としては、エレベーター事故やこんにゃくゼリー窒息事故のように、所管官庁がはっきりせず、調査する体制にない分野を扱う「消費者事故等調査機関(仮称)」の設置と事故調査の独立性、公正性を高める必要性から「消費者事故等調査評価会議(仮称)」を早ければ2012年度に庁内に設置する方針を示しています。
事故調査機関の一元化については、最後まで活発な論議を致しました。検討会としては、早急に整備すべき「消費者事故等調査機関(仮称)」が、今後一定のレベルまで制度として整備された後に、事故調査機関を一元化していくメリット、デメリットを再度検討していくこととなりました。
消費者庁の検討委員会では、監督官庁から独立した透明性ある機関を作り、国民が納得できる事故調査制度を構築するために、様々な角度からの真剣な論議が毎回されました。事故調査の必要性、求められる属性、事故調査と刑事手続きとの関係などについての論議は、今後に必ず生かされていくと考えます。
8・12連絡会は、今回のとりまとめを受け、国交省は、今回の工程表にある支援体制の整備や被害者等支援室の実現に向けた具体的な取組みを開始すること。また、消費者庁は、早急に「消費者事故等調査機関(仮称)」を作ることに着手することを要望いたします。   
以上


[3]
事故調査制度の検討と事故被害者支援の在り方について活発な論議が行われることとなった経緯と今後について
2008年4月、参議院の国土交通委員会で、「国土交通省設置法等の一部を改正する法律案に対する付帯決議」が出され、公共交通機関にかかわる事故の被害者支援の充実が図られることになりました。
そこで、遺族・被害者の支援については、2009年9月から国交省で「公共交通における事故による被害者等への支援のあり方検討会」が始まりました。2009年12月、国交省では、「JR福知山線脱線事故の検証委員会」が作られました。また、2010年8月には、消費者庁で、「事故調査機関の在り方に関する検討会」ができました。これら3つの検討委員会には、被害者が参加し、被害者ならではの視点で重要な発言をしました。そして、この1年半は、多くの事故被害者団体が長年求めてきたことがやっと取り上げられ、被害者の視点に立った事故調査制度の構築や被害者支援が、大きなうねりとなり、実現に向かっています。

私たちは、被害者支援と事故調査は車の両輪と考えています。被害者には、情報提供や生活支援、経済支援などの直接支援が必要です。一方で、事故調査により原因究明が行われ、再発防止への取り組みを促す事故調査機関が十分に機能しなければなりません。その両輪があって初めて被害者は、事故前の冷静な日々に戻ることができると思います。
責任追及を優先させる刑事告訴や裁判は、被害者、遺族には大きな負担となります。遺族にとって、事故後の生活の立て直しが、第一です。私たちは、企業自らが透明性を持ち、事故調査に真摯に参加しなければ、社会から排除されていく、という安全文化を育てていきたいと思います。また、企業から信頼される事故調査機関でなければならないと思います。
「JR福知山線脱線事故の検証委員会」には、安部誠治先生、柳田邦男先生、畑村洋太郎先生、佐藤健宗弁護士らが委員として参加しました。そして、何よりも7人の被害者・遺族委員の発言を中心に検証作業が進められました。これは画期的なことだと思います。さらに、被害者と加害者が共に事故原因について、責任問題を外して議論をする場となった「福知山線脱線事故の課題検討会」も同時に進められました。
 この検討会での作業は、今までの事故の被害者たちが持ち続けてきた「命を生かしたい」という願いを形にするものであったと思います。こうした議論は、御巣鷹山事故が起きた26年前には、できなかったことですが、思いは同じです。今回の福知山線事故の被害者、遺族が求めた安全構築のための道筋は、今後、事故被害者が冷静な日々に戻るために必要かつ重要なプロセスの一つとして刻まれること信じます。

3月11日に起きた東日本大震災の被災地の皆様は、想像を絶する大きな苦しみの中におられます。支援体制のさらなる整備が早急に必要です。被害者も被災者も同じで、東日本大震災の被災者も、原発事故の被害者も、まずは、被害の救済が第一です。直接支援である経済的支援、生活支援体制が早急に構築され、さらに、中期、長期にわたる被害者支援体制を整備していくためにも、今回の国交省の被害者支援の検討会の提言が、一日も早く実行される必要があります。被災者不在の復興計画としないために、被災者(被害者)と共に論議し、被災者の希望を丹念にくみ取る作業をお願いいたします。 また、心のケアについては、過去の惨事で、肉親を失ったストレスが、長期にわたり遺族を苦しめた反省に立った取り組みが行われて欲しいと思います。

原発事故の原因究明の検証は、日本の信頼を回復する大切な機会であり、多様な証言やデータから人類が教訓とすべき真実を読み取る、思慮と英知が求められています。「大規模事故の多くは複数のミスが重なって起きる。予断を持たずに調査し、背景を含め、複合的な要因を解きほぐすのが調査の基」「個人の責任追及が優先しすぎると証言が得られない、真相解明の妨げとなる」と、私たち日航機事故の遺族や他の事故の被害者が被害者の視点で発言をしてきました。
表面的な責任追及が、かえって真相歪曲を招くこともあります。真実を見つめ、情報を公開し、教訓を国際社会と共有していくことが、この大災害で亡くなられたお一人おひとりに対して、残された私たちがしなければならない最大のことだと思います。今後、原発政策の抜本的な見直しや、既存の原発の危険度の判定に対しても、今回の検証が果たす役割のとてつもない大きさを思います。
今回の原発事故で、事故の原因の調査についての国民の関心が身近なものとなりました。まさに経産省も変わらざるを得ないでしょう。現在、運輸安全委員会は、「昨年から遺族への説明等を行う担当者を置き、本年4月からは事故調査情報提供窓口を作るなど」変わろうとしています。変わらざるを得ない状況でもあります。事故調査や被害者支援について、これからも被害者の視点で発言を続けていきます。

以上



2つの検討会の「まとめ」は下記にあります。

☆国土交通省
「 公共交通における事故による被害者等への支援のあり方検討会」まとめについて
  • まとめ(PDF ファイル170KB)
  • 別添資料(PDF ファイル316KB)

☆消費者庁
「事故調査機関の在り方に関する検討会」取りまとめについて
  •「事故調査の在り方に関する検討会」取りまとめ [PDF:307KB]
  •「事故調査の在り方に関する検討会」取りまとめ(概要)[PDF:286KB]

 

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